本研究所の主たるテーマや活動の柱は次のようなものとなっています。
1)鎮守の森・自然エネルギーコミュニティ構想
2)鎮守の森セラピー(鎮守の森・森林療法)
3)祭りと地域再生・活性化
1)は、東日本大震災や原発事故をへて、今後はできるだけローカルな地域に根ざした「分散型のエネルギーシステム」を作っていくことが大きな課題であることを踏まえ、自然と一体となった地域コミュニティの拠点であった「鎮守の森」と自然エネルギー拠点整備とを結びつけ、ローカル・コミュニティの活性化を図っていくという趣旨のもので、現在すでにいくつかの具体的プロジェクトを進めています。
これは、自然エネルギーという現代的課題と、自然信仰とコミュニティが一体となった伝統文化を結びつけたものとして、日本が世界に対して発信できるビジョンとなりうる可能性をもっていると私たちは考えています。
2)は、人間にとって緑や自然との関わりが、心身の健康や精神的充足にとって大きな意味をもつことを踏まえ、いわゆる森林療法や、地域の高齢者や子どもなどが様々な交流や健康増進活動などを行う場として、鎮守の森を積極的に活用しこうというものです。
3)は、最近若い世代が「ローカルなもの」への志向や関心を強めていることや、「祭り」が盛んな地域において若者のUターンや定着が多いとの指摘があることを踏まえ、祭りのもつ現代的な意義や、伝統文化や歴史性・風土性と一体になった地域再生・活性化のあり方を探求していくものです。そこでは、地域再生といった公共政策的・社会科学的研究と民俗学的・宗教学的研究との接合といった視点も重要になってくると思われます。
上記のほか、高齢化や社会の成熟化の中で、死生観やターミナルケアへの関心が高まっていることを踏まえ、「鎮守の森ホスピス」とも呼ぶべき、鎮守の森と死生観・ターミナルケアをつなぐ試みについても吟味していく予定です。
また、以上のような地域に根ざした具体的・個別的な研究テーマや活動と併せて、より広く、これからの時代の生命観や「地球倫理」とも呼ぶべき価値原理、コミュニティ経済あるいは経済の地域内循環、「緑の福祉国家」(ないしエコソーシャルな資本主義)等々といった、価値や社会システム、公共政策に関わるより普遍的なテーマについても探求していきたいと考えています。